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子どもの「好き」を応援するために、親が用意するのは正解ではなく入口

ISS×VRイベントの準備をしていると、何度も考えることがあります。

子どもたちに、どんな体験を届けたいのか。
宇宙に興味を持ってほしいのか。
VRを好きになってほしいのか。
将来、何かを作る人になってほしいのか。

考え始めると、答えはどんどん難しくなります。

せっかくイベントに来てくれるなら、何かを持ち帰ってほしいと思います。
楽しかっただけで終わらず、未来につながる体験になってほしいとも思います。

親としても、大人としても、そう考えるのは自然なことですよね。

でも最近は、子どもたちに何かを好きになってもらうことが目的ではないのかもしれないと思っています。

ただ、今まで知らなかった世界の入口を一つ増やしたい。
それだけでも、十分なのかもしれません。

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私が住んでいる長野県の地域は、わりと田舎です。
子ども向けの塾や習い事も、少しずつ減っています。

AIやVR、宇宙、ゲーム制作のような、最先端のテクノロジーに触れられる場も、日常の中にはほとんどありません。
もちろん、探せば何かしらあるのかもしれません。

でも、そもそも情報を見つけることが難しいのです。

東京のように、イベントや人が集まる場所が近くにあるわけではありません。
地域で面白いことをしている人がいても、その情報が外に届いていないこともあります。
発信する力がある人ばかりではないので。

たしかに、今はSNSがあります。
一見すると、情報はいくらでも手に入るように見えます。

でも実際には、自分が普段見ているものと似た情報ばかりが流れてくることもあります。
興味がないと思われたものや、まだ知らない世界の情報は、こちらまで届きにくいです。

子どもにとっても、親にとっても、知らないものは最初から選択肢に入りません。
ここが、これからますます大きな課題になるのではないかと思っています。

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そして、子どもの可能性を広げたいと思うと、親はつい大きなことを考えてしまいます。

良い習い事を探した方がいいのか。
新しい教材を用意した方がいいのか。
英語も、プログラミングも、AIも、早いうちから触れさせた方がいいのか。
これからの時代に必要な力を、少しでも身につけさせた方がいいのか。

SNSを見れば、すごい経験をしている子どもたちがたくさん目に入ります。

海外に行った。
コンテストで賞を取った。
小学生なのにアプリを作った。

そんな話を見ると、自分の子どもにも何かしてあげた方がいいのではないかと、少し焦ることもあります。

ただ、すべての家庭が同じように時間やお金を使えるわけではありません。
地方に住んでいると、行きたい場所へ行くだけでも時間がかかります。

東京に行くとなれば、交通費も宿泊費もかかります。
以前よりも、気軽に行ける金額ではなくなっています。

それでも私は、数か月に一度は県外に出るようにしています。
多いときには、毎月のように東京へ行くこともあります。
親子で参加できるものなら、子どもと一緒に行きます。
自分だけで参加できるものなら、まずは自分だけでも行きます。

全部を経験させることはできません。
でも、一回だけでも触れておくことには意味があると思っています。

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また、家ではなるべく私自身が先にやってみるようにしています。

AIを触ってみる。
VRを体験してみる。
知らないコミュニティに入ってみる。
イベントに参加してみる。

うまく説明できなくてもいいです。
詳しくなれなくてもいいです。

ただ、親が新しいものに触れている姿を、子どもがいつでも見られる状態にしておく。
それだけでも、家の中に少し違う空気が生まれる気がしています。

「これは知らないから無理」ではなく、
「よくわからないけれど、ちょっと見てみよう」

親がそういう姿勢でいることは、言葉で教えるよりも伝わることがあるのかもしれません。

子どもに何かを無理にやらせるためではありません。
子どもの目の前に、選べる景色を少し増やしておくためです。

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最近、息子との会話で、少し驚いたことがありました。

息子はいま小学4年生です。
保育園の頃や、小学1年生の頃に話していたことを、ふと思い出したように話すことがあります。

当時は、私が何を言っているのかよくわからなかったようです。
話をしていても、途中で嫌になってしまうこともありました。
こちらとしては、無理に理解させようとしていたわけではありません。

ただ、日々の中で、いろいろな話をしていました。

これからの仕事のこと。
ゲームやインターネットのこと。
人と違うことをやってもいいということ。
これからの仕事のこと。
ここ数年ではAIのこと。

その頃は、本人の中で意味がつながっていなかったのだと思います。
でも小学3年生の後半頃から、急に言うようになりました。

「おかあちゃん、前にこういうことを言っていたよね」
「それは、こういうことだったんだね」と。

過去の会話と今の自分の体験が、本人の中でつながり始めているようでした。
私も、そのたびに驚きます。
そんな前の話を覚えていたのかと。

当時は届いていないように見えても、子どもの中には何かが残っている。
そして数年後に、別の体験と結びついて、自分なりの意味になる。

子どもは、大人が思っている以上に、たくさんのものを受け取っているのかもしれません。

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だから、子どもの体験をすぐに成果で測らなくてもいいと思っています。

イベントに参加した日に、宇宙が好きにならなくてもいいです。
VRを体験して、その場で何かを学ばなくてもいいです。
帰り道で「楽しかった」と言わなくてもいいです。

その日に何も変わらなくても、別に問題ありません。
数年後に、何か別のものとつながるかもしれません。

あのとき見た宇宙の映像。
初めて触ったVR。
親と一緒に見た動画。
地域のイベントで出会った人の話。

そういう小さな点が、後から線になることがあります。

親がやることは、子どもの未来への道筋を最初から決めることではないのだと思います。
親がやることは、点を置いていくことなのかもしれません。

その点と点を、いつ、どのようにつなぐのかは、子ども自身が決めればいいです。

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ISS×VRイベントも、誰かを宇宙好きにするためだけに開くわけではありません。

VRが好きにならなくてもいいです。
宇宙飛行士を目指さなくてもいいです。
プログラミングに興味を持たなくてもいいです。

ただ、いつもの生活の中では出会わなかったかもしれない景色を見てもらう。
「宇宙は、自分とは関係のない遠い話ではないのかもしれない」と感じてもらう。
「自分も何かを作れるかもしれない」と思ってもらう。
そんな小さなきっかけを渡せたら、それで十分です。

イベントを準備していると、VRを体験する数分間だけを考えればいいわけではないことにも気づきます。

初めて機械に触る子もいるでしょう。
宇宙に興味がある子もいれば、あまり関心がない子もいるでしょう。
待ち時間が長いと、集中が切れてしまう子もいるかもしれません。
VRを外した後に、自分が見たことをうまく言葉にできない子もいるかもしれません。

だから、体験の前後に何を置くのかを考えています。

宇宙について少し知るクイズ。
見つけたことを書けるミッションシート。
体験したあとに、誰かと話せる時間。
手を動かして、感じたことを残せる小さな工作。

VRを使うこと自体が目的ではありません。

「すごかった」で終わるよりも、帰り道に少し話したくなる体験にしたいです。

「ISSは本当に地球の上を飛んでいるの?」
「宇宙飛行士はどうやって寝るの?」
「自分も宇宙に行けるのかな」

そんな問いが、一つでも残ったらうれしいです。

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親にできるのは、子どもの未来を決めることではありません。
子どもがいつか選べる景色を、少しだけ増やしておくことなのだと思います。

そのために、親自身も知らない世界を少し覗いてみる。
わからないままでも、人に話を聞いてみる。
面白そうなものに触れてみる。
そして、子どもに「一緒に見てみよう」と言える大人でいる。

私自身も、まだその途中です。

AIも。
VRも。
宇宙も。
知らないことばかりです。

でも、知らないからこそ、少し覗いてみたいと思っています。

子どもの選択肢を増やすというのは、特別なものをたくさん与えることではないのかもしれません。

小さな入口を、ひとつずつ増やしていくこと。
今は、それが大事なのだと思っています。

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